こんにちは。歌い手&作詞作曲DTMerのLettyです。
作詞をする時、ただ何となく作っていると何を書けばいいかわからなくなってきたり、意味が伝わりづらかったりすることもありますよね。
作詞において使える言葉はほぼ無限なので、自由であるが故に難しく考えてしまいがちです。しかし、歌詞を一つの物語として聞き手に意味を伝えやすくするにはコツがあります。全体のテーマや設定を決めておくことで、次の展開が想像しやすくなるので非常に歌詞が書きやすくなります。
そこで今回は、作詞をする時の手順やコツについてお話します。
作詞の基本的なルール
作詞は、メロディーの音数にうまくおさまるように言葉を選んで作っていかなければなりません。ただ単に言葉を並べるだけの詩を書く場合には必要ありませんが、作詞の場合は、最低限必要な基本的なルールがあります。
字脚(じあし)
歌には1番、2番…などの構成があります。1番と2番でメロディーが同じなのに文字数が違いすぎると、言葉がメロディーにうまく当てはまらず、歌いにくくなってしまいます。多少違っていても問題はありませんが、そんなに変わらない程度には揃えたほうが統一感があって歌いやすくなります。この文字数のことを字脚(じあし)と言います。
物語の起承転結
作曲において、イントロ→Aメロ→Bメロ→サビなどのように起承転結のような展開があります。歌詞もそれに合わせて展開を広げていくと、形になりやすいです。
【各パートごとの書き方】
Aメロ・・・物語のあらすじを書きます。例えば、今いる場所やそこに誰がいるのか等を書いたりします。
Bメロ・・・Aメロとサビを繋ぐ重要な部分になります。あらすじの後に起こった出来事や、今の気持ちにどんどん加速していくような回想シーンを描いて、サビの結末に向けて盛り上げていきます。
サビ・・・ここは一番伝えたいことを書く部分なので、言いたいことをストレートに、シンプルに書きましょう。サビでは、遠回しな表現や何かに例えたりする必要はあまりありません。
作詞の手順
作詞においては、細かく設定やシチュエーションを決めておくと作りやすくなります。
①詞のテーマを決める
自分が何を伝えたいのか、ざっくり大きなテーマを決めます。これは、詞の方向性が途中でずれてしまわないようにするためです。
仮に大きなテーマを「恋愛」と決めたとしたら、今度はそこから片思い・失恋・両想い・結婚などの細かい設定を決めていきます。
【テーマの例】
恋愛、友情、人との別れ、応援ソング、卒業、出会い、テーマソング、アニソン、物語など
②テイストを決める
先程決めたテーマで曲を作るとして、今度は曲のテイストを決めます。
例えば、
・アイドルみたいに元気で可愛い感じ
・かっこいいグループが歌ってそうな感じ
・アニソンのようなテーマ曲っぽい感じ
・正統派アーティストっぽい感じ
・ストレートに思いをぶつけるバンドっぽい感じ
・ちょっと病んでる感じの雰囲気
などです。同じことを伝えるにしても、どんなテイストにするかによって雰囲気が変わってきます。
③誰に伝えたいのか、ターゲットを決める
全員に共感してもらおうとしてしまうと、薄っぺらい内容になりがちです。年齢・性別・状況や環境など、どの層に共感してほしいのかをしっかりと絞っていくと、歌詞が書きやすくなります。
④言葉の連想ゲーム
書きたいテーマが決まったら、そこから思い浮かんでくる言葉をどんどん書き出していきましょう。例えば大きなテーマを「恋愛」、細かいテーマを「失恋」としたら、「失恋→辛い→泣く→涙→ハンカチ…」などのように関連のある言葉を連想させて膨らませていきます。たくさん言葉を書き出して、その中から使いたい言葉を選びます。
また、「雪」「花火」「桜」などの季語を入れたりすると、季節感を出すことができます。
⑤全体の設定(5W1H)を決める
5Wは「いつ(when)、どこで(where)、誰が(who)、何を(what)、なぜ(why)」を、1Hは「どのように(how)」を表しています。
このような細かい状況の設定をしておくことで、その時の感情や情景が思い浮かびやすくなります。
⑥歌詞における主人公の設定を決める
主人公を設定しておくと、歌詞が書きやすくなります。聴く側の人間も、主人公の設定が自分と似ていたりすると、自分の状況と重ね合わせて聴くことができるので共感しやすくなります。
年齢、性別、性格、趣味、職業など、詳しく設定しましょう。
⑦サビで一番言いたいことを書く
AメロやBメロはサビの前置きとして作り、サビで一番言いたいことを思いっきり書くのがおすすめです。その曲において一番伝えたい事、最初に決めたテーマの軸になるような内容を盛り込みます。
同じ内容がだらだらと続いてしまわないように、Aメロ・Bメロでは本当に言いたいことは言わず、サビに向けてあたためておくようにしましょう。
⑧1番と2番の書き分け
曲に1番、2番がある場合、違いのつけ方には定番の方法が2つあります。
➀1番では過去の事を書き、2番では現在のことを書く
時間軸で分けることによって、別の場面を描くことができます。
➁1番では「私目線(僕)」、2番では「相手目線(君)」で書く
誰目線かによって思うことも違ったりするので、違いをもたせることができます。
言葉の使い方(技法)・テクニック
作詞において、覚えておくと便利な言葉の使い方を説明します。
韻を踏む
言葉の母音を合わせることを、「韻を踏む」といいます。ラップでよく使われる技法ですが、ラップじゃなくてもよく使われています。
例えば、「心は解放、気分は最高」という歌詞があるとします。下線を引いた部分が、韻を踏んでいる場所になります。実際に発音してみるとわかりやすいですが、これらはすべて母音が「aio」になっています。
このように、言葉の最初や最後において母音を揃えることで、リズムに一体感が生まれます。
比喩表現
何かに例えることを「比喩(ひゆ)」といいます。歌詞の中ではよく使われる技法で、「〇〇のようだ」「〇〇みたいに」「まるで〇〇みたいだ」というように、物事や感情などを何かに置き換えて表現します。
例えば、「花びらのように散っていった」と表現したとします。このままだとありきたりで、印象に残りにくい感じがします。これを、「春の桜の花びらのように散っていった」と変えてみると、少し状況が想像しやすくなります。また、人によって想像する花も違うため、個性が出てきます。
このように、少し具体化して例えてみると、聞き手の頭に残りやすくなります。
倒置法
例えば、「僕は、学校へ行った。」という文章があるとします。これは、同じ意味のまま「僕は行った、学校へ。」と並べ変えることができます。
このように、言葉の順序を並べ替えて結論を先に述べる文章のことを「倒置法」といいます。つまり、「〇〇である、✖✖は。」「〇〇する、✖✖を。」のような文章のことです。
倒置法を使うことで、結論を強く印象付けることができます。しかし、あまり使いすぎるとしつこくなり伝えたいことが分かりづらくなってしまいますので、「ここは強調したい!」と思うところで使うのが効果的です。
【例】
歌詞に入れるとしたら…
・違うんだよ、本当は。
・素敵だね、あの人は。
・聞きたいよ、君の声を。
みたいな感じで使うことができます。
反復法(リフレイン)
例えば、普段聴いている音楽でも「高く高く」「もっともっと」「熱く熱く」「きっときっと」などのように同じ言葉を繰り返しているのを聞いたことがあると思います。
このように、同じ言葉を繰り返すことでインパクトを与える技法のことを、「反復法」といいます。
反復法を使うことで、一度聴くと耳に残りやすいという効果があります。これも使いすぎるとしつこくなりやすいので、乱用には気を付けましょう。
やってはいけないNG例
初心者にありがちなNG例を紹介します。
言葉の区切り方が不自然
音符の数に対しての歌詞のつけ方のことを、「譜割り」といいます。メロディーに対して歌詞の区切る場所が合っていないと、不自然に聞こえてしまいます。実際に歌ってみるとわかりやすいと思いますが、中途半端なところで言葉が途切れてしまわないようにしましょう。
言い方を変えて同じことを何度も言う
初心者の場合、AメロでもBメロでも言いたいことを詰め込みすぎてサビでも同じようなことを書いてしまうということがあります。それでは起承転結の展開もなく、面白みがなくなってしまいます。物語を作るイメージで、AメロやBメロなどのセクションが変わるタイミングで感情や状況の変化をつけましょう。
タイトルになるようなワードがサビに入っていない
大体の曲には、サビで曲のタイトルになるような言葉が入っています。それがないと、曲のインパクトが薄くなってしまいます。サビやサビの終わりあたりで、キャッチーなワードを入れるようにしましょう。
ありきたりな言葉ばかり使っている
同じ意味でも、別の言葉で表現することで印象が変わってきます。ありきたりな言葉ばかりだと、聴く人もあまり響かなかったり、飽きてしまいます。一度作った歌詞を見直して、別の表現ができないかどうか探ってみましょう。
作詞のコツ
結論から言ってしまえば、作詞をする時はサビから書き始めるのがおすすめです。サビは、起承転結でいうと「結」の部分になります。つまり物語の終わりの部分になるので、ここを目的地としてサビにたどり着くまでの出来事などの過程を考えていきます。
例えば、「遊園地に行きたい!」と思ったとして、まず車で行くのか、バスで行くのか、電車で行くのかなど交通手段を考えますよね。他に、「友達は3人誘おう!」「みんなでご飯を食べてから行こう!」「あの店でチケットを買おう」とか、目的地にたどり着くまでの間にいろいろ計画を立てますよね。
これと同じように、作詞をする時も「サビ」という目的地にたどり着くためにはどのようにすればいいのか考えていけばいいのです。目的地が決まってさえいれば、何をしたらいいのかが見えてくるはずです。
まとめ
ここまで、作詞の手順やコツについて説明してきました。
・メロディーと文字数をできるだけ合わせる。
・作詞をする前に細かく設定を決める。
・倒置法、反復法は乱用しすぎない。
・「サビ」という目的地に向かって歌詞を作っていく。
これらを意識して作っていくと、一貫性のある歌詞を書くことができます。そうすると、作った歌詞に共感してもらえることや、「いい歌詞だな」と思ってもらえることも増えていきます。
ぜひ、今回紹介した手順で作詞を行ってみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。